2013/05/10

イスヒョクと昼食を食べた あなたと一緒にランチ



 12時に会うはずだったイスヒョクとは、12時30分にやって来た。黒のスキニーパンツに黒の革のジャケット、ラウンドネックの灰色のコットンのTシャツと黒のフ―ディーを着て来たのに、そのシルエットは全体的にスリムだった。なるほど(彼が好きか分からないが)エディスリマンの再現である。カフェの中をさっと見通して、目的地を決めたようにつかつかと足を運んでテーブルにやって来た。「こんにちは、イスヒョクです」コントラバスを思わせる重低音の声が誰も居ないカフェに重く落ちた。我々は、マンメイド・ウヨンミ・フラッグショップストアの2階のカフェで会った。イスヒョク本人が決めた場所だ。「出来たばかりで家から近く、煙草を吸えるところなのでよく来ます。前は最新のレストランやカフェを探して通っていたけれど、最近はちょっと面倒になりました。いつも会う友達と家の近くでよく会います。家の近くなんです。髪ななんとなく切りました」凝ったヘアスタイルはシンプルながらもシックだった。写真を撮らないことを知らなかったというイスヒョクは照れ臭そうに笑った。彼はパリに行って来た話から始めた。「バレンシアガのルックブックを撮りに行ってきました。その為にフィッティングで服を300着くらい気がえました。いくら服が好きでも、ここまでくれば体力的に大変です。韓国では、マネージャーが多くの仕事を手伝ってくれたんですけど。あまりにも大変だから、思わずイライラしてくるんですよ。数日後にペイチェックを受けたんですけどやっぱりけっこう入っていました。『これを稼ぐために苦労したのか?』という考えが浮かんで溜息をついて休んで居たら、イギリスから来た友達がパッと笑って『数日働いてこれだけ稼ぐなんて気分が良い』と言うんです。その言葉が私に大きな衝撃を与えて、全ての発想の転換のきっかけを作ってくれました」その時、注文したアイスアメリカーノとブラウニーが出てきた。喉が渇いていたのか、コーヒーの半分を飲んだイスヒョクは、一層穏やかな表情でパリで得たポジティブなエネルギーの話を続けた。

 「年を取って、経験する価値観の変化を最近感じています。以前はスニーカーは絶対に履かないという考えを持っていました。ところが最近は、スニーカー程楽な靴はなくて。だから、昔のインタビューを掘り起こして見て時々嫌になる時があります(笑)まるでどのような基準で話したのか恥ずかしい時があります。インタビューするのはちょっと難しいのです。いつ変わるか分からない嗜好や考えが文字に残ってしまうでしょう。とにかく少しでも大変でした。確かに好きなことをしているのに行きあたったことを楽しんでいるというより、何かもっと必要なんじゃないか?という焦りに苦しめられたんですよ。パリに行って来てとても多くのことが変わりました」イスヒョクは最近『怖い話2-崖』という映画を撮った。崖から落ちた二人の男が孤立し体験した話ですが、自分の役割が多くぶざまだとにやけるように笑った。「1年前にはこんな役はやらないと思います。けれど、最近は見せたことのない姿を見せることが楽しいです」本当にやってみたい役は青春モノや学園モノだと言った。自分からフェードアウトされている『少年』を写真に収めておきたいと言ってイスヒョクは真剣な表情を見せた。「科学の日」とレゴの組み立てが一番好きだった少年だったように話す姿は本当にその頃の子供の姿を見るようだった。0.1秒程、イスヒョクの顔に子供のイスヒョクの顔が現れて姿を消した。イスヒョクに会う前に、マネージャーは無条件に彼の意見が重要だと言った。インタビューも彼がしたいと言った。それについて尋ねた。

 「決定する基準は特にありません。その時期にタイミングが良ければです。したいことをする良いエネルギーがあるでしょう。そうでなければ、その時間自体が大変でエネルギーが出ていく感じがしますから。そんな気持ちで何かを実行したくないですし、結果もよくない。そういうことは未然に防ぐんです。代わりにすると決めたことは頑張ります。責任感を待っているんです」気難しいイスヒョクが1ページ分のインタビューを快く(実際にはこの言葉を書くことに自信はないが)受けた理由が気になった。「以前、『Vogue Girl』で沢山雑誌の仕事をしました。まだ手元に残してありますよ。最近、『記憶される時代』についてよく考えます。時が経てば消えてしまう、その数々の時代をより多く残しておこうという考えも。俳優に転向してから多くの人が『モデルは辞めたのか?』と思うようです。私は今でもショーではモデルです。そのアイデンティテーを最後まで持っていきたいと思います。作品と写真を残しておきたいという思いもある。この話は何処かで必ずしたかった話なのですることが出来て良かったです」イスヒョクが体を伸ばしてブラウニーの端をフォークで切った。「あ、これ自分でやったんですかね?」彼が体をもたれていた白い壁に服から染み出た黒い汚れが着いていた。クローゼットもスーツケースも開ければ一面黒ばかりと言う彼は、自分の痕跡をそこに残したようだった。私たちは声を抑えてこの事実を秘密にしておくことにした。デザイナーのウヨンミはこの記事を読んでも目を閉じて頂きたい。多分その汚れを直接確認するために店を訪れる人がいるかもしれないから。イスヒョクと一緒の昼食の最後のシーンを思い出してみる。細い指でパーラメントリミテッドエディションの包装を剥がして、その前にあった灰皿が見え隠れする。煙草に火を付けたのか、水を口にしたのか正確には覚えていない。何故か彼の顔ではなく、エゴン・シーレのような人物画がその場に残っている。

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